JPフランスの 市場/政治/教育など  by Tomoko またいとこのブログ(日曜日ごとに発信)第1章 2020疫病の年 8月の放談


フランスの 市場/政治/教育など  

2020.08.02  Tomoko


フランスの市場

スイス国境近くのフェルネーで毎土曜日に開かれる市場。食べ物が山積みで、何でもばらで売っていますからゴミは出ません。いまだに鉛筆と紙きれを使って計算しているスタンドの持ち主も。ローカルというだけでなく、いくつもある有機(bio)野菜のスタンド。bioの肉類や同じくbioの山羊や雌羊のチーズも手に入ります。大西洋や地中海から運ばれてくる種類がたくさんの鮮魚、地元イタリア産の各種ラヴィオリ。ハム・ソーセージ類、くるみ、ワイン、自家製はちみつ、自家製きのこ、などなどもあります。









最近拡張しているのが、地中海のイワシ、アンチョビー、イカ類、鰺など、実に新鮮な魚をより安価に売っているアラブ系の人のスタンド。初めはアラブ人しか買っていなかったのに、今はフランス人も流れてきています。広い売り場に美しく魚を並べ、グルメ嗜好の魚をその場で捌いてくれる故に値段も張る魚屋のと比べても、プラスティックの籠に雑然と盛られた彼らの魚の味は絶妙。最近は、墨が十分残った甲イカでイカ墨ソースを作ったり、ヤリイカ丸ごとのゆで汁を取っておいて、自家製エビカレーに足したり、と素材料理の楽しみが増えました。

フランスの食文化

フランスの食文化はやはり凄いです。直接に近い形で、毎週地域の食べ物が買えるのは、本当に贅沢と言えましょう。フランスは平地が多く、れっきとした農業国ですが、それだけでなく、EU国が隣近所なので、新鮮な食材がそこからも入って来るのです。我が家の近くにはポルトガル人の経営する食料品店があり、そこでは、気候がより温暖なポルトガルから、ジューシーな果物が季節に先駆けて売られています。このような幸運を享受できる私は、享受できない人たちに対し、何ができるか考えざるを得ません。

自給農業を推進する

フランスは平地が多いことから農業や牧畜がしやすいので、食物が豊富にでき、結果的に食文化が発達したのか、と思います。日本のように山岳地帯が多いし、天災、人災の多い国で健康的な農業のやり方を推進することは、ますます難しくなってきました。気候変動で自然界の危機も多く語られるようになりました。

人間に基本的に必要な食が保障されるよう、日本にいる人が食べるものを輸入品ばかりに頼らず、なるべく自給自足し、暮らしの価値観を変えることで、さらには行政、経済、司法の制度の改革に繋げていくことをまず優先していかなければならないのではないでしょうか。


最近のフランスの内閣交代

話は変わりますが、物事はすべて関連しています。フランスの政治の姿勢に関してです。7月初めフランスでは、支持率がエマニュエル・マクロン大統領より高かったエドゥアール・フィリップ首相率いる内閣が総辞職しました。大統領の希望に従い、フィリップは一期目二年で、未練もなくさっさとやめたのです。彼はル・アーブルの市長でもありますが、かたや、交代した首相のジャン・カステックスもプラグ市の市長を兼ねています。日本の政治体制とフランスのそれとを比べてみると面白いです。

半大統領制

今の第5共和政のフランスでは、大統領の権限が強いです。実質的国家元首と言え、国民議会(日本の衆議院に相当)を解散したり、外交権、首相の任免権などを持っています。5年が任期で、連続三選は許されません。内閣は首相の提案で大統領が任命するのです。閣僚は、したがって、大統領には属していません。このような他国の政治の制度の違いを知ることは、自国の政治の行き詰まりを再考するのに役立つのではないでしょうか。

所属する党も、マクロン大統領が≪共和国前進≫党であるのに対し、フィリップ前首相もカステックス新首相も、中道右派の共和党員です。ちなみに、閣僚は議員でなくとも、どんな人でもなることができます。日本のように、2012年以来、閣僚はすべて与党の国会議員、というのでは、異論を交えた議論の結果としての政策が生まれませんね。日本でも半数は民間人でも閣僚になれる決まりがあるので、文化人、学者、専門家など、知見や予見のある人が閣僚になって欲しいものです。

新首相を迎えて、マクロン大統領は、今国民に関心の深い環境問題や、移民対策、地方行政に力を入れるとしています。コロナ禍の影響で国の経済立て直しは深刻ですが、そのことだけを前面に出さず、歴史を通しての過ちを意識した外交や、世界中に関係のある環境課題に目を向けているところが感じ取られ、日本の政治家に比べればずっと展望のある政治家に見えます。

ヨーロッパ各国では、主に元植民地だった国からの移民の扱いをどうするかが大きな問題です。フランスでは1994年に起こったルワンダの虐殺事件に当時の政府が加担したとみられることを、表面的かも知れませんが、今も、少なくとも歴史に遡って両国の関係を改善しようとする姿勢が見られます。あまりに複雑な紛争で、私にはよく分かりません。でも、歴史にまるで無関心で、Go toキャンペーンのように消費を促すことで、経済の復興ばかりを考える日本の政治の質には落胆します。

閣僚たちの政治・行政学の高度な習得度

フランスの閣僚たちの学歴をみると、ほとんどの人が、政治学院、国立行政学院、グランゼコル、高等師範学校といった超エリート教育を受けています。これらの名門校は、しのぎを削って勉強しなければ入れない学校です。かといって、卒業生が皆、優れた人材とは言えませんが、ともかくもこういう人たちが官庁の重要な役職に任命される、という事実があります。フランスの、この官僚のエリート主義には反発も多いです。しかし、日本のように政治家で一冊も本を書いていなかったり、国会の答弁がYesNoを言うくらいの簡単なものでも、原稿なしではできないとしたら、閣僚の政治見解はどうやって知ることができるでしょうか。


愛国心と教育

故国を離れて半生以上になっても国を憂うこの気持ちを愛国心というのだろうか。フランス人も愛国心が強いです。でも日本政府があおっている愛国心とは現れ方が違う。国旗が示す自由・友愛・平等の精神は、自分だけが享受するものではなく、他人がそれらを享受することを、同じように重んじる、ということでしょうか。フランス人は、なんというか、人類のためという博愛意識が強い国民ですね。

Chiyokoさんが言及した日本の昔話には、桃太郎にしろ、舌切り雀、花咲じじい、浦島太郎、こぶとりじいさん、おむすびころりん、かちかち山、鶴の恩返しなどにしろ、日本一になる夢に示される愛国心の高揚があったり、善玉と悪玉が必ずいて、悪玉が最後には罰せられ、善玉はご褒美をもらう、という筋書きとなっています。こういうお話を聞かされて育った子供は、良い子にならなければいけない、という考えを小さい時から植え付けられてしまうでしょう。この考えは敵をつくり、分断や差別を生みだします。一人の人はすべての面を持ち合わせているはずで、善玉でも悪玉でもありえるのではないですか。

今は漫画の時代となり、漫画のキャラクターのなかで子供たちは育ち、もう、こういった昔ばなしなどに触れることもないのかも知れない。それでも、善玉、悪玉教育よりはましかも知れない。思想教育は、人間の生来の個性を歪めてしまいます。ましてや、学校教育の場は一色の思想教育に染める場であってはならないと思います。十人十色でいい。人格を信頼できないような大人が道徳教育を推奨するのは、ちゃんちゃらおかしいではありませんか。論理的に物事を考え、誰をも敵とせず議論ができる教育が望まれます。何のために勉強するか、自分のためです。勉強しなければ深いところまでわからない、というのが私の経験です。以上、先回のChiyokoさんの書かれた国歌に関するブログから派生して、教育に絡み少しコメントさせていただきました。





  

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